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Global Risk Communications Newsletter
最新の医学専門誌に報告された、 がん・栄養・環境リスクに関する疫学研究を紹介します。

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βカロテンで死亡率上昇、ビタミンEは効果なし。



βカロテンやビタミンEのサプリメントを投与した12件の臨床試験のデータをまとめたところ、βカロテンを飲んだグループの死亡率は飲まないグループより高く、ビタミンEを飲んだグループの死亡率は飲まないグループと変わらなかった。米国クリーブランド・クリニック基金のグループによるこの研究は、ランセット2003年6月14日号に報告された。

研究グループは、βカロテンやビタミンEのサプリメントを投与した無作為割付臨床試験のうち、(ビタミン欠乏が重要な問題にならない)先進国で行われ、対象者が1000人以上の研究を、12件選び出した。

このうち、βカロテンの臨床試験は8件あった。健康な集団を対象にした研究が4件、喫煙者や心臓病の既往者などの高リスク群を対象にした研究が4件だった。米国の研究が5件、フィンランド・英国・オーストラリアの研究が1件づつだった。対象者の人数を合計すると、138,113人だった。

また、ビタミンEの臨床試験は7件あった。健康な集団を対象にした研究が2件、高リスク群を対象にした研究が5件だった。英国とイタリアの研究が2件づつで、米国・フィンランド・国際共同研究が1件づつだった。対象者の人数を合計すると、131,551人だった。

それぞれの論文で報告されているデータをまとめて、すべての死因を合わせた死亡率(全死亡率)と、心臓病や脳卒中による死亡率(循環器死亡率)を、サプリメントの投与群と対照群で比べた。


βカロテンには反対すべき

その結果、まずβカロテンの研究をみると、投与群のほうが、対照群よりも、全死亡率が高く(7.4%と7.0%)、循環器死亡率も高かった(3.4%と3.1%)。

つぎにビタミンEの研究をみると、投与群でも対照群でも、全死亡率には差がなく(11.3%と11.1%)、循環器死亡率にも差がなかった(6.0%と6.0%)。脳卒中の発生率と、心筋梗塞の発生率(と循環器死亡の合計)を比べても、差がなかった。

こうした結果から研究グループは、βカロテンを含むサプリメントの使用には積極的に反対すべきで、ビタミンEサプリメントの使用も支持できないと結論している。さらに、βカロテンを使った臨床研究は中止すべきで、心臓病予防についての将来の臨床研究でビタミンEを使うべきではないと述べている。


「抗酸化仮説」暗礁に

ところで、活性酸素がLDLコレステロール(いわゆる悪玉コレステロール)を酸化変性させることが動脈硬化の原因となり、それが心筋梗塞や脳卒中につながるという仮説が唱えられてきた。そのため、活性酸素を処理する抗酸化物質、なかでもビタミンEを多く摂れば、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患を予防できるのではないかと考えられてきた。

じっさい、細胞レベルの基礎研究や動物実験では、この「抗酸化仮説」を支持するデータがたくさん報告されてきた。また、前向きコホート研究を始めとする疫学研究でも、ビタミンEサプリメントの予防効果を示すデータが報告されてきた。

けれども、研究としての信頼性がもっとも高い無作為割付臨床試験のデータをまとめた今回の報告では、ビタミンEサプリメントによる循環器疾患の予防効果は認められなかった。


健康な集団での効果まで否定できず

留保すべき点がひとつある。ビタミンEに関する臨床試験7件のうち5件は、喫煙者や心臓病の既往者などの「高リスク群」を対象にした研究だった。「健康な集団」を対象にした研究は、2件しかなかった。いっぽう、ビタミンEサプリメントの予防効果を示すこれまでの前向きコホート研究は、おもに「健康な集団」が長期間服用した場合の効果を調べている。

つまり、ビタミンEのサプリメントを、ある程度動脈硬化の進んだ「高リスク群」に投与しても効果がないことは、今回の調査ではっきりした。けれども、動脈硬化が始まっていないような「健康な集団」に長期間投与しても効果がないことまで、はっきりしたとは結論できない。ただし、健康な集団に長期間投与する臨床試験を、これ以上くりかえして行うのは、実際のところむずかしいだろう。

けっきょく、心臓病や脳卒中の予防にあたっては、意義のはっきりしない「抗酸化仮説」にもとづいて、ビタミンやポリフェノールを多く摂ることを気にするよりも、意義のはっきりした要因(たばこ・高血圧・高脂血症など)に優先して取り組むほうが、的を射ているだろう。


研究デザイン 無作為割付臨床試験のメタアナリシス。

出典 Vivekananthan DP, et al. Use of antioxidant vitamins for the prevention of cardiovascular disease: meta-analysis of randomized trials. Lancet 2003; 361: 2017-2023.